Gentle rain
「階堂さん。」

振り絞って出した声に、あなたはハッとして、その温かい手を離してしまった。

「…ごめん。」

「いいえ。」


どうして謝るの?

私はもっと、触れていてほしかったのに。


「ここに来るまで、迷わなかった?」

「迷ったけれど、受付の近くにあった案内を見て、ここまで来ました。」

受付であなたのいる場所を聞いて、兄さんから会社の社長だと聞かされていたけれど、まさかこんな大きなビルを持つ社長さんだと、思わなくて。

案内を見ながら、もしかして場違いなところに来てしまったのかもって、不安で仕方がなかった。


「行こうか。」

「はい。」

階堂さんは、私をまたエレベーターに連れていく。

そしてまた蘇ってくるあなたの噂。

聞くに聞けずに、気づいたらお店の前に立っていた。

「素敵…」
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