Gentle rain
「いや、あれは……」

「ほら、席空きましたよ。」


店員さんに呼ばれて、俺達二人は、お店の奥のテーブルの席に通された。

「あの、菜摘さん。」

タイミングがいいのか悪いのか、注文したパスタが、席に座ってすぐに出てきた。

「ご注文はお揃いでしょうか。」

「はい。」

「ごゆっくりどうぞ。」

店員さんが席からいなくなると、菜摘さんは嬉しそうに、スプーンとフォークを手に取った。

「はい、どうぞ。」

菜摘さんに手渡されたその二つを、俺は無言で受け取った。

「……どうも。」

受け取ったスプーンとフォークを手元に置き、俺は添えてあったレモンをパスタの上に絞った。


「いいんです。忘れて頂いて。」

菜摘さんは、陽気に話し始めた。

「別にキスしたからって、付き合っているとは限らない。」
< 160 / 289 >

この作品をシェア

pagetop