Gentle rain
経験から、その期待はしぼんでいくのではないだろうか。

だから敢えて、その期待をむやみに消さないのかもしれない。


菜摘さんと別れて、会社に一人戻ろうとした時だった。

「階堂さん?」

どこかで聞いた覚えのある声に、少しだけ身体を横に向かせた。

「ああ、やはり階堂さんだ。」

自分に近づいてきたスーツ姿の男性。

やはりどこかで会った気がした。


「覚えていますか?」

「……森川社長のパーティーに来ていた方ですよね。」

名前までは覚えていないが。

「はい。三科です。」

「ああ、そうだ。三科君だ。」

そう言えば、菜摘さんはあまりタイプじゃないと、言いきった男だ。

「こんな場所で会うとは、驚きました。階堂さんの会社、もう少し先ですよね。」

「……よく知ってるね。君の会社はこの周辺?」
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