Gentle rain
「敦弥さん。」

「どうした?」

「私、幸せよ。」

急にそんな事言うものだから、敦弥さんは面食らった表情をしていた。

「……よかった。美雨にそう言って貰えて。」

敦弥さんのホッとした表情を見ると、私もホッとした。


敦弥さんに手を振って、私は社長室のドアを閉めた。

「美雨さん。」

一息もつかないうちに、廊下で待っていた菜摘さんに見つかってしまった。

「…決心、ついた?」

菜摘さんのその言葉に、私は目を閉じた。


知っていたんだわ。

私が敦弥さんに会わせてと言った理由を。

「はい。」

私は一言だけ返事をすると、エレベータに向かった。

「美雨さん!」

廊下に菜摘さんの声が響く。

「ごめんなさい……許して、美雨さん。」

涙声で菜摘さんは、私に許しを乞うように謝った。

それが余計に、私を惨めにさせる。

「どうして謝るんですか?」

「えっ?」

ふいを突かれたように、菜摘さんは立ち尽くしている。
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