Gentle rain
「えっ?」


まさか?

そんな事ってあるのか?

俺は自問自答しながら、秘書の子と目を合わせた。

「かわいい子だといいですね。」

「誰が?」

秘書の子が急に、悪戯に微笑む。

「入口で待っている子、若い女の子だそうですよ。」

「はあ?」

「いってらっしゃいませ。」

そう言って秘書の子は、ゆっくりと社長室のドアを閉めた。


一人エレベーターに乗り、一番下まで降りながら、受付にいるという若い女の子の事を考えていた。

誰だろう。

ここ数年、若い女の子とデートなんて、しかも食事すらした事がないのに。


“かわいい子だといいですね。”

秘書の子の何気ない一言に、ニヤつく。


いやいや。

何を期待しているんだ。

相手はただ、落し物を届けに来てくれただけだぞ。
< 59 / 289 >

この作品をシェア

pagetop