同居人は無口でクールな彼



「翔哉くん――」

「すず――」



“言いたいこと言えたじゃん。野々村さん”

“名前で呼んでくれるんじゃねーの?”

“よかったな、すず”



名前を呼んでくれるようになって……

少しずつだけどわたしに心を開いてくれていることが感じられた。

少しだけ翔哉くんに近づけた気がした。



「翔哉くん、おめでとう!すごくかっこよかったよ」

「ありがとう。優勝はできなかったけど。来年は絶対優勝する」


惜しくも翔哉くんは決勝戦で上級生に負けてしまった。

でも、その雄姿はわたしの記憶にきちんと刻み込まれている。



“俺は一人でも生きていけるけどね”

“あいつとは死んでも仲良くしたくないね”



初めは一人でいようとする意味が分からなかった。

翔哉くんがどうしてわたしたちを遠ざけるのか、その理由を知りたかった。


冷たく引き離しながらも、翔哉くんの言葉はわたしに力をくれたんだ。

周りと打ち解けるきっかけを作ってくれた。




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