私の運命は、黙って愛を語る困った人で目が離せない。~もふもふな雪豹騎士にまっしぐらに溺愛されました〜
 壁に掛けられた時計を見てスノウがそう言うと不満そうな顔をして、アナベルは横を向いた。上位に位置する貴族から名前が呼ばれるはずだし、プリスコット辺境伯家の傍系であるとはいえ、彼女と連れ立って出ていくのはまだまだ先のはずだ。

 スノウは幼なじみでもあるアナベルは正直苦手だった。自分の思い通りにならないとすぐに泣く。若い女の子は面倒くさいところのある、そういうものだとわかってはいたが、彼女はそういう性質が強くて顕著だった。

 過去の親の不始末を引き受けるかたちになった長兄には悪いが、アナベルの結婚相手が自分でなくて良かったと、心からそう思う。隣に立つ自分にしきりに話しかけているアナベルの話に相槌を打ちながら、ため息を噛み殺す。


 何気なく視線を動かした時に運命は、可愛い女の子の姿をして現れた。


 雷に撃たれた感覚というのだろうか。それを見た一瞬で心を攫われる、そんな経験などもちろん人生の中、はじめてだった。

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