夢幻の春

悪夢

いなくなった者は一体どこへと消えてしまったのだろう。これは神隠しか、それともはたまた夢か……。


警察に捜索願いをだしても見つけられなかった。もちろん自分でも探し回ったし、色んな場所に手がかりを求め遠出もした。行きそうな場所とふたりで行った場所を手当たり次第。


なのに、何も掴むことはできなかった。


美しい日々の物語が去来する。その度にこれは嘘だ、たちの悪い悪夢だと否定するが、現実は残酷なものだった。


空っぽの部屋がそれを証明し、歌われない歌がそれを鮮明にする。『歌が好きなんだ。誰かの心に陽を灯すような歌が』 ――ああ、なんであの時引き止めなかったんだ。なんであの時、お前の歌なんて大嫌いだって、心にも無い言葉を吐いてしまったのだろう。


雪人。


雪人。


俺は…………お前を、いつまで待てばいい?


いつまで…………。


心に重くのしかかる。


雪人が言ったから。


『春馬が歌詞をかいてよ。前から思ってたんだ、君の言葉で歌いたいって。頼むよ』


両手を合わせて必死に頼まれる。はじめて見る姿に等々折れれば、思いっきり抱きしめられてしまった。ありがとうって何度もお礼を言われて、少々照れくさかったのを今でもよく覚えている。


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