夢幻の春

春の夢

瑠璃色の鳥はそれから飛び立った。追うように慌ててベランダに出てみると、そこは春の夢のように美しい夢幻が広がっていた。   


空から降る桜雨をみんな食い入るように見、それぞれが自由に言葉を紡いでいる。手を伸ばし花弁に触れようとする者もいれば、画像として残そうとスマホをかざす者まで様々だ。



俺だけは遠くに想いを馳せて。



ああ、もう春なのか。



いつだったか里山で春の美しき夢に出会った。満開の薄紅色の花弁に出迎えられたそこは、まさに夢の国だった。花に包まれその光景にただふたり酔いしれる。日が暮れるまでしっかりと瞳に焼き写していた、ずっと憶えていられるように。



再び手にした春にあいつはもういない。その手の中に花弁を閉じこめ、歌詞を繋いでいく。――どんなに夜が永く先が見えなくとも夜は明け、陽は昇る。光は自らに宿りそしてまた照らしていく誰かを。



いつかまた会おう、あのさくらの中で。



心の中のさくらが枯れることはけっしてないから。



< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

魔王様と暁の姫
椿灯夏/著

総文字数/4,213

ファンタジー9ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
すべての始まりはたったひとつの願いだった。 “大切な人を失いたくない” 「例え偽りの記憶でも構わない。自分にとって、本物なら」 始まりは雨。 「探したよ“魔王様”」 ーー例えどんなに酷い物語(結末)だとしても。 姫のために紡ぐ(生きる)と決めたんだ。もう、何からも俺は逃げたりしない。 これは明けない世界で紡ぐ夜明けの物語。 (更新お知らせ) 雨空の出会いまでが更新 こちらの魔王様の物語は旧作品としてさせていただきたいと思います。こちらも更新しつつ、新の方にはプラスがつきます。
花の海駅より君に描く、“約束の花”が咲いたとき
椿灯夏/著

総文字数/5,215

恋愛(純愛)12ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
夜明け前――花の海駅で“花”と出会った。 りんご飴のように紅い瞳をした少年。 スケッチブックに描く、花。 泡沫の夏に咲く、淡い出会い。
鳥籠の死神
椿灯夏/著

総文字数/3,601

絵本・童話21ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ただ生きているだけなのだ。 ただ、生きたいだけ―― 愚かな人間とただひっそりと生きたいだけの死神。 「世界は人間だけの世界ではない」 レビュー、感想ありがとうございました 希乃己様 お稲荷様

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop