相性がいいみたいなのですっ
*いつか交わした約束を
「……修太郎(しゅうたろう)さん、あの約束、覚えていらっしゃいますか?」

 水を口移しで飲ませてくださったあと、日織(ひおり)さんが僕の身体をそっとソファに横倒しにしていらして。


「ひ、おり……?」

 両肩を日織さんの細腕でそっと押さえつけられて、心臓が跳ね上がる。

 そのまま僕の上にちょこん、とまたがるように座っていらして、うっとりと僕を見下ろす日織さんに、心の中で「嘘だろ?」とつぶやいた。


 これって……日織さん、やっぱり酔っていらっしゃるんじゃ……?

 いつもなら考えられない日織さんの大胆な行動に、僕は彼女から目が離せない。

 そう言えば長いこと〝仲良し〟をしていないから今のご自分は〝危険人物〟なのだとおっしゃっていらしたのを思い出す。

 これってやはりそう言うのも影響して……?


 と、悠長にそんなことを考えていた僕に、もう一度催促するように「忘れてしまわれたわけじゃないですよね? ()()()?」とたたみかけていらっしゃるとか。

 僕を〝呼び捨て〟になさるあたり、絶対そうだ。日織さんも、酔っておられる。


 だからといって、どうしたらいいかとか思い浮かばないまま――。

「約、束……」

 ぼんやりした頭で日織さんの言葉を復唱して……。


 過日日織さんが悪戯っ子のような笑顔を浮かべて仰った言葉を思い出した僕は、寸の間遅れてハッとした。
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