旦那様は征服者~慎神編~
「莉杏、大丈夫?痛い?」
「大丈夫だよ」
「ちょっと、手当てさせてね」
個室に戻ると、慎神がすぐに手当てをしてくれた。

慎神が薬を優しく塗ると、ピクッと反応する莉杏。

「あ…ごめんね!痛いよね?」
「ん…大丈夫だよ。ほんとだよ!」

手当てが済み、店を出ようとする。
会計の為、店員を呼ぶ。
すると、オーナーが現れた。

「天摩様、今回はお食事代はいただきません。
奥様のお召し物の代金と病院代金をお手数ですが、後日連絡いただけませんか?」
「だから!金はいらない。
食事代も、ちゃんと受け取れよ。
奏瑪、後はよろしく!」
そう言って、奏瑪の頭をポンポンと撫でた。

そして莉杏の腰を抱き、個室を出た。

「オーナー、これでお願いします」
奏瑪がオーナーに、カードを渡した。
「しかし!」
「莉杏様に悪いと思われるなら、きちんと受け取るべきでは?少なくとも慎神様は、オーナーのことは認めていらっしゃいます」
「え?」
「頭、撫でられたことありますよね?慎神様に」
「え?あ、はい…」

「あれは、慎神様の“信頼”の証です。
慎神様は、基本的に常に警戒心をもって行動されています。
あの方に、頭を撫でられる━━━━━
それは、かなり高貴なことなんですよ?」


一方の慎神と莉杏。
「あの、慎神くん」
「ん?なぁに?もしかして、痛む?」
奏瑪が戻るのを車内で待っている間、慎神は莉杏の膝をずっとさすり続けていた。

「ううん。慎神くんがよしよししてくれてるから、全然痛みないよ。そうじゃなくて!」
「フフ…じゃあ、ずっと撫でてよっと!
で、何?」
「あの店員さん、クビなの?」
「わからない。それは、僕が決めることじゃないから」
「そうだよね」
「そんなに気になる?」
「なんか、可哀想というか…」
「同情してるの?」
「だって……」

「僕の言いつけ、破る気?」

「え!?そんなこと…!?」
「僕以外に同情なんて、あり得ないよ!」
膝をさすっていた手が、そのままスカートの中に滑り込んでくる。

「慎神くん////!やめ━━━━」

「“同情”なんて、最低な感情だよね…」
そう言って、胸のネックレスを握りしめた慎神。

「え……」
「他人と同じ気持ちになったところで、何になるの?
それよりも切り捨ててあげる方が、相手の為だよ」
「慎神くん…」
「それに!
同情するなら、僕に同情して?」
「え?」

「僕の大切な莉杏が怪我させられたんだよ?
僕は、自分が傷つくより痛いよ!
本当は、あいつを殺したいくらいなんだから!」

「あ…そう…だよね……ごめんね、慎神くん」
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