旦那様は征服者~慎神編~
慎神は、幼い時に両親を事故でなくしている。

駆け落ちして結ばれた、慎神の両親。
慎神の叔母は、一人になる慎神を“可哀想だから”という理由で引き取ったが、慎神にとってその同情は何一ついい思い出がない。
日々鬱陶しがられながら過ごし、育てて“あげている”と言わんばかりの圧力。

そして慎神が一人立ちし会社を立ち上げ軌道に乗せると、途端に“育ての親”のような面をする。

何度も、お金をせびりに来たのだ。

「ほんと、無能でしょ?
調子がよすぎる身内ばっかで、ほんっと…うんざりだった」
「同情が最低な感情って……」
「そうだよ。同情で育ててもらうくらいなら、捨てられた方が良かった。だって僕は、幸せを感じてなかったんだから」

「そのクセ、王子が会社社長になると手の平を返して甘える。バカでしょ?」
新汰が言葉を続けた。

「だからね、新汰が僕の周りの無能を絶ってくれたの」

「え?それって……」
「莉杏ちゃんの、想像通りだよ。
だって、王子に悪影響しか与えないんだから」

「このネックレスは、その証」
「罪の?」
「ううん。幸せの証!」
「幸せ?」
「そうだよ。無能がいなくなった幸せ!」

何を言っているのだろう。
二人は、人が亡くなることを“幸せ”だと言っている。

莉杏は、身体をガクガク震わせていた。

「莉杏、寒いの?」

そんなわけない。
暖かくなってきた、この時期に………
怖いのだ。
恐ろしいのだ。

人の死を、幸福だと言う二人のことが━━━━


「莉杏」
「な、何?」
「放れられないよ?」
「え……」
「放さないよ、絶対に」
「………」

「莉杏、僕の目を見て?」
「慎…神…くん…」
慎神は、莉杏の頬を包み込み目を覗き込んだ。

「莉杏の大好きな人は、誰?」
「慎神…くん…」
「そうだね。
莉杏は、誰のモノ?」
「慎神…く…」
「うん。
ほら、僕を“安心”させて?」
「慎神くん…大好き…」
「うん」
「慎神くんと、一生一緒にいたい……」
「うん。
そして?」

「慎神くんがいれば、何もいらない……」

「フフ…うん。お利口さん!
僕も、莉杏が大ー好き!莉杏がいれば、何もいらないよ……!」


慎神は、催眠術でもかけるように莉杏を洗脳し侵食させた。

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