旦那様は征服者~慎神編~
それからの莉杏は、慎神に“依存”を見せていた。

「おはよ、莉杏!」
「おはよう…慎神く…眠い……」
莉杏は被さってる慎神に更にしがみついた。

「フフ…可愛い~
でも、僕…会社行かなきゃだから…起きなきゃ……」
頭を撫でた慎神が、莉杏の身体を支えながらゆっくり起きた。

「うん…」
「はい!莉杏、服着ようね!」
ガウンを着た慎神が莉杏に服を着せ、抱き上げた。

朝食は奏瑪が作り、準備をしていた。
「おはようございます、慎神様、莉杏様」
「おはよ!」
椅子に莉杏を座らせた慎神が、奏瑪の頭を撫でる。

「いただきます」
莉杏が感情のない表情(かお)で食べ始めた。

しかし慎神が話しかけると………
「莉杏、玉子焼好きだよね?あげる!」
「うん!ありがとう!」
ふわっと笑うのだ。

その光景を見ていた、奏瑪。

何とも言えない気持ちになる。


「莉杏、いい?
今日の莉杏の仕事は、洗濯と掃除だよ。
昼ごはん、ちゃんと食べなきゃだよ!
僕がいないからって、食べないのはダメ!
わかった?」
「うん。ちゃんと食べる」
スーツに着替えた慎神が、ソファに座っている莉杏の足元に跪いて言い聞かせた。

これも、毎朝の事だ。

「莉杏、スマホ。首から外しちゃダメだよ!」
そして莉杏の首に、スマホをかけた。
「うん。このストラップ、可愛い~」
「うん!莉杏の好きな、◯◯ちゃん柄だよ!」

まるで、親子のようだ。

「じゃあ…行ってくるね!」
「うん!行ってらっしゃい!気をつけてね!」
小さく手を振り、お互い微笑む。

奏瑪が後部座席のドアを開ける。
慎神が車に向かってくる。
玄関のドアが閉まる瞬間、莉杏の目の色が変わった気がした。

「━━━━━━!!?」
「奏瑪?どうしたの?」
「いえ…」

「慎神様、もう少し莉杏様を自由にさせてはどうですか?」
「は?なんで?」
「慎神様のご負担も大きいでしょう?
朝起こして、着替えさせ、ダイニングに連れてきて、莉杏様の一日の予定を伝える。
お仕事中以外電話をし続け、帰ってからもお風呂に入れて、着替えさせ、寝かせる。
その他にも、全て慎神様がお世話をしている。
慎神様は、お仕事もされているんですよ?
ただでさえお忙しいのに、週に一度買い物にも連れていく。休みもずっと莉杏様の傍にいて、全く休みになっていない。
僕は、慎神様が心配なんです。
体調を崩されるのではないかと……」
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