聖なる夜に、始まる恋
「ということで、昨日のはNGです。」


「えっ?」


「あのシチュエ-ションじゃ、私、お返事できません。もう1度、心を込めてお願いします。」


そう言うと、私は秀から身体を離し、彼と向き合った。見つめ合う私たち、そして1つ大きく息をすると、私の目を真っすぐに見て、秀は言った。


「京香、俺はお前が好きだ。今までも親しい間柄だったけど、これからは・・・それとは違う、もっと近しい関係になろう。ずっとお前と一緒にいたいんだ。だから・・・俺と付き合ってください。」


その言葉を聞いた私はコクンと1つ頷くと


「ありがとう、そのあなたの気持ち、とっても嬉しいです。これから改めて、よろしくお願いします。」


そう言って、私は彼の身体に吸い寄せられるように、身を委ねる。そんな私をしっかり抱きしめてくれた秀。


「ありがとう。でも本当に俺でいいのか?とりあえず妥協か?」


「バカ、そんなわけないでしょ?『京香の帰る場所は俺が用意する。』そんなカッコいいこと言ってくれたって知ったら、惚れるしかないじゃん。」


そう答えた私に


「えっ、なんでそれを?」


驚いて聞き返す秀に


「さぁ?」


そう答えて、私は笑う。


「でもね、本当に嬉しかったよ。だから、そのお言葉に甘えさせてもらう。私、東京に出るの止めたから。」


「いいのか?」


「うん、マーティも阿久津教授もそれでいいって言ってくれたから。東京にいなくても、絵は描けるし、コンク-ルにも応募できる。仕事もたぶん大丈夫だから・・・。秀、ありがとうね。」


「えっ?」


「私は欲張りだから、好きな人と絵と両方を手に入れる、それが私の夢だった。それは1度は諦めたことだったけど、秀のお陰で、私はまたその夢を追いかけ、実現することが出来るようになった。感謝してる。」


「京香・・・。」


そして私たちは見つめ合う。秀の唇が近付いて来る、それを待ち受ける私はそっと瞳を閉じる。初めて重ね合った幼なじみの唇は、イメ-ジよりもとても柔らかくて、甘かった。


やがて唇が離れ、その余韻に浸りながら、私たちはまた、お互いを見つめる。


「さぁ、これからどうする?」


そう尋ねて来た秀に


「ずっと一緒にいたい。ただ、それだけ。」


私は甘えるように答えた。


「わかった、そうしよう。今日はイブ、今夜、この日に一緒にいる権利を、たった今、俺達は手に入れた。一生忘れない、大切な夜にしよう。」


「うん。」


秀の言葉に頷いた私。見つめ合って、微笑み合って、そして手を繋いで、私たちはまた幻想的な景色を寄り添って眺める。


私たちの聖なる夜は、始まったばっかり・・・。



END
< 31 / 31 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
大学時代、一方的に憧れ続けた人。 もう二度と会えないと思っていた。 それなのに数年後―― 私の前に現れた彼は、まさかの「部下」だった・・・。 でも彼は、私のことを覚えていない・・・。 南澤 和那(みなみさわ かずな) 29歳。 株式会社ネクストリンク勤務。 社内でも一目置かれる敏腕企画営業で、冷静な判断力と行動力を武器に数々の案件を成功へ導く。 大学時代はインカレバンドでキーボードを担当。 「あなたは、私に気づいていない。」 朝比奈 湊(あさひな みなと) 29歳。 元プロミュージシャン。 大学時代は人気バンド『Riot Beat』でボーカル兼ベースを務め、卒業後はプロに転向するも、夢破れ音楽業界を去る。 現在は株式会社ネクストリンクへ転職し、和那の部下となる。 「気づいていなかった。あの人が、すぐそばにいたことに。」
ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
marumori/著

総文字数/183,744

恋愛(オフィスラブ)178ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
突然、親からお見合いを強要された私は、とっさにウソを吐いた。 「結婚を見据えて、お付き合いしている人がいる」と。 その結果、苦し紛れのウソをマコトに、いやマコトに見せなくてはならなくなり 思い悩んでいた私に、救世主が現れた。 そして始まった偽装同居生活。私のウソから始まったこの関係を いつしか、私はホンモノにしたいと思うようになった。なのに、その思いを告げる寸前で 彼は私の前から姿を消した。 それから時は流れ、私は再び、彼と出会うことになった。 でも彼は言った。 「あの頃の俺は、本当の俺じゃないから。」 結局、何がウソで、何がホンモノなんだろう・・・? 偽りから始まった関係は、ホンモノにはやっぱりならないのかな・・・? --------------------------- 菱見 凪咲(28) (株)AOYAMA 受付嬢・派遣社員 × 新城 裕(28) (株)AOYAMA 業務改善プロジェクトリーダ-・御曹司 -----------------------------
Far away    ~遥かなる想い~
marumori/著

総文字数/351,354

恋愛(純愛)351ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
列車から降り立った私を迎えてくれたのは、降り注ぐ陽がもたらす凄まじい熱気だった。 都会とはまた厳しさが一味違う暑さに、一瞬顔をしかめた私は、でも懐かしさも覚えていた。 改札を出て、かつて通い慣れた勝手知ったる道を歩み始める。 (さすがに昨日のことのよう、とは思えないけど、でもあれから10年経っちゃったとも思えないよね・・・。) そんなことを考えているうちに、やがて見えて来たその場所。そこには、彼がいるはずだった。 かつて、私の姿を見て (天女が舞い降りた・・・。) そんなことを本気で思って、一目ぼれしたというあいつが・・・。 ----------------------------  廣瀬 彩 ×  二階 尚輝 ---------------------------- ☆この作品の登場人物である菅野京香と西川秀の短編物語 「聖なる夜に始まる恋」もよろしければ、是非、ご覧くださいませ。☆  

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop