秘密のノエルージュ

「菜帆、ちょっと待ってて」

 奇妙な恥ずかしさを感じてソワソワしていると、一言だけ言い残した大和がそのまま奥の部屋へ消えて行った。

 あそこは大和の部屋だ。最近は訪れてもリビングまでしか立ち入らないことが多いが、昔は大和の部屋で一緒にゲームや宿題をすることも多かったから、一応把握はしている。

 ほどなくして部屋から戻って来た大和の手には、小さめの段ボール箱が乗せられていた。

「ほら」

 手渡された箱をじっと見つめる。何の箱なのかと側面を見て、あっと気が付いた。

 それは正規の通販サイトで購入した場合のみにお目にかかれる公式の段ボール箱。特徴的なフォントと天使の羽根がデザインされた『WHO-LILL』の社名。大和がプレゼントしたいと言っていた、菜帆お気に入りのランジェリーブランドの箱だ。

「中に領収書入ってると思うけど、どうせ値段バレてるだろうからそのまま渡す」
「う、うん……」
「鏡の前で見る時間は三分までだからな」
「あ……はい」

 大和は全部知っている。菜帆の趣味も、それに費やす情熱も、菜帆がどんな行動を取るかも。

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