秘密のノエルージュ

 どうやら大和が菜帆の母が作ったケーキを美味しいと褒めたから、調子に乗っているらしい。今年もそうやって大和が腕前を褒めるから、母はきっと来年もケーキを作って菜帆に持たせるのだろう。

 玄関棚の上にコンビニの袋を乗せた大和が、菜帆の手からケーキの箱を受け取ってくれる。

 大和は菜帆がそのまま家の中に入ってくると思っていたらしく、背を向けてドアノブに手をかけると、不思議そうに名前を呼ばれた。

「菜帆、?」
「あ……わ、私ケーキ届けに来た、だけで」

 今は《《まだ》》そういうつもりで来たわけじゃない、と伝えると、大和がぐっと沈黙した。そのまま数秒、時間が止まる。

「……なんだ、期待してたのにな」
「大和」

 悲しそうな声を出した大和に、誤解させる言い方をしてしまったと気付いて、焦って説明をする。

「あの……お風呂入ったら。二十時に、また来る……から」
「!」

 その説明に、ぱっと顔を上げた大和と目が合った。驚きの中に少しだけ喜びの表情を含ませた瞳と見つめ合うと、急に恥ずかしくなる。すぐにぱっと目を逸らす。それは大和も同じだったようで、視線を合わせないまま更に数秒沈黙してしまった。

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