#青春リクエスション

ホームルームがちょっとだけ延びた帰り、寧々は部活に行っちゃったし1人で少し暇だった。

電車通学の私はホームルームの時間で結構左右される。

先生の話が盛り上がっちゃったりすると、時間がかかって帰りの電車に間に合わないんだよね。

しかも田舎だから30分に1分しかないし。

おかげで今日は今から25分暇だ。

人が減っていき静かになっていく教室、手すりに両肘を置いて窓の外をただぼーっと見ていた。
グラウンドではサッカー部がボールを追いかけてる。野球部は外回りをランニングしてる。テニス部はテニスコートで…帰宅部の私は何もすることがなくて、ただぼーっと。

電気の切られた光りのない教室で、ひとり。


「…野木会長、彼女いるんだ」


……。

…。



………え？


「何今の！？」

いやいやいや、今のは変だ！
絶対雰囲気に流されただけだよ！
みんな部活とか励でるのに私何もしてないーみたいな感傷に浸ってつい口から出ちゃっただけだよ！

別に好きになってたわけじゃないし！

なってた…っ

わけじゃないから。

「………はぁ～～～～っ」

手すりに顔を伏せた。

何これ、ほんとヤダ。

「………。」

瞳を閉じたら浮かんできてしまう。


にこりと微笑んだ野木会長が。


焼き付いて離れない。

顔を上げてスカートのポケットに入れていたスマホを取り出した。

トントンッとタップして開いたのは生徒専用非公式SNSアプリ“Speaks”の画面。
なんとなく気になってインストールしてしまった。

＃青春リクエスション、あれから誰も呟いていない。

＠blue_springって、運営側も何も呟いてないなー…

これ一体誰が何のためにやってるんだろう。うちの学校専用だから、生徒なんだろうけどなんでこんなことしてるのかよくわからない。

目立ちたいとかそんな感じなのかな？

アカウントをタップしてプロフィール欄に何が書いてあるのか見ようと思った。


“キミの高校生活を少しだけ彩る”


そう、一言だけ書いてあった。

「…知れば知るほど胡散臭いな」

…高校生活を彩るね、そりゃ退屈な生活送るよりはいいけどさ。


でも彩るって何してくれるの？

もっとワクワクさせてくれるの？

この愛和高校に来てよかったって思わせてくれるの？


「…じゃあ私の生活も彩ってみせてよ」


“好きな人とデートがしたい＃青春リクエスション”


思わず送ってしまった。