【電子書籍化】内緒で出産したら、俺様御曹司と結婚することになりました。
2つ年上の有名な先輩。
人気者の彼を好きな人は沢山いた。
彼女だという先輩も沢山いたし、私なんかが近づいても、見向きもしてくれないことは分かっている。
だから、私は気持ちを伝えることはせずに密かに想っていた。
一言も話すことができなかった、初恋の相手が何故か今、ニューヨークで目の前に立っている。
その訳の分からない状況に、私の頭は追いつかなかった。
「あっそ……で、ホテルはどこだ?」
どうして彼は私に声をかけてきたの?
そう思いながらも、私はホテルの名前を告げる。
「そこなら歩いて行けるな。行くぞ」
「えっと……あの?」
「知らない人について行くのが不安か?俺は水野晃樹だ」
知らない人について行くのが不安という勘違いをしている彼に、名前なら知っています――とは言えなかった。
「……私は椎名 雪音(しいな ゆきね)です、案内お願いします。水野さん……」
「晃輝でいい。行くぞ、雪音」
私をちらりと見た後、そう言って歩き始めた。