大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
***

「君がさっき、()()()()の携帯を取り上げて彼女を困らせてくれた羽住(はすみ)十升(みつたか)くんですか?」

 羽住(はすみ)は、自分をひたと見据えられて発せられた塚田(つかだ)修太郎(しゅうたろう)の言葉に、無意識になけなしの唾液を飲み込んだ。

 喉がカラカラに乾いて、呼吸が止まってしまうのではないかと言う、何とも言えない威圧感を覚えさせられる。

 わざとらしくフルネームで言質(げんち)を取るみたいに問いかけられたのが、余計に怖い。

 別に恫喝(どうかつ)されたとか胸ぐらを掴まれたとかそう言うわけではないのに、日織(愛しい妻)を見つめていた時とは明らかに眼前の男が身に(まと)った空気感が変わったことを、羽住(はすみ)はヒシヒシと実感せずにはいられなくて。

 気が付けば、程よく空調のきいたホテル内にいるにも関わらず、全身に鳥肌が立っていた。

 何か応えなければと思うのに、声が出せない。

 まるで、蛇に睨まれた蛙の気持ちだ。
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