大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 そこにチュッとリップ音を立てて吸い付くと、

「――僕の方がきっと……日織(ひおり)さんの身体のことは、キミ以上に知っていると思います」

 わざとそこだけ声を低めて。

 首筋のほくろから、唇をゆっくり這い登らせて、耳朶を()むようにして続ければ、日織の全身が一瞬にして薄桃色に染まったのが分かった。


「いっ、……意地悪なのですっ」

 身体を丸められない代わりにミラー越し、日織が涙目で修太郎(しゅうたろう)を睨みつけてきて。
 その視線に、修太郎は小さく吐息を落とす。


「……本当に意地悪なのは、僕をこんな風にしてしまう日織(ひおり)さんの方でしょう?」

 言いながら、再度日織の手を目の前の鏡にひとまとめにして縫い留めると、ブラのホックを片手で外す。

 日織とこういう行為に及べるようになるまで、修太郎は女性の身体に触れたことがなかった。

 それを思うと、片手で難なく女性用下着の留め具が外せるようになる程、自分が女性の扱いに(こな)れてくるなんて思いもしなかった修太郎だ。

 それだけ目の前のこの美しい肢体(からだ)を、己の思うさまに(むさぼ)ってきたということなんだと、頭の片隅でふと思う。
< 68 / 253 >

この作品をシェア

pagetop