ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
絡まった糸


***



白石友哉が帰ったあと、瑠佳は途方にくれていた。
祥太を連れて部屋に入ってからも、膝の震えは止まらない。

(どうして……)

白石家はたいそう立派な家柄だということは佳奈から聞いていた。
瑠佳が姉から祥太の父親は白石商事社長の長男の白石航大だと教えられたのは、祥太が生まれてからだ。

姉の佳奈と妹の瑠佳は双子の姉妹だ。今年二十六歳になる。
一卵性の双子だから、外見はよく似ているが性格は真逆だ。
姉の佳奈は明るくて社交的。瑠佳は内気で大人しい性格だ。

佳奈の話によれば白石航大との出会いはずいぶん前で、中学の頃に同じ進学塾に通っていたそうだ。

同じ塾といっても、航大が1歳年上だからクラスは別々。
たまたま彼の妹の真理恵(まりえ)さんと同じ学年で仲がよかったから知り合えたらしい。

当時から航大は人気者で、佳奈は彼にずっと憧れていたという。
無理だと思ったけど中学二年の時にバレンタインのチョコを渡してみたら、ホワイトデーにキャンディーを貰ったのはいい思い出だと話していた。

航大は大会社の長男に生まれていて、将来は社長になる人。
我が家は六本木の外れにある、父がシェフを兼ねているビストロ。

お互いに気になる存在だったが、余りに育った環境が違いすぎた。
中学生なりに身分とか立場の違いを理解していたから、ふたりの関係は淡い気持ちの初恋で終わっていた。



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