ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


友哉の心を読んだかのように、三上が事情を話し始める。

「誤解しないでくださいね、友哉。きっかけは君ですから」
「はあ?」

真理恵も料理をテーブルに並べながら、三上に同意して首を縦に振っている。

「もしかして、航大の一周忌か?」

友哉は帰国できなくて参列していないが、身内だけで集まったと父から聞いていた。

「そうなの。母が一周忌のあと、お兄様の部屋に入ってみるって言いだして」
「そうだったのか」

航大の母の文香(ふみか)は、長男を突然失ってからかなり落ち込んでいて、この一年は息子の部屋にも入れなかったという。

友哉は真理恵の言葉から、失ったものの大きさをあらためて感じていた。

「私もお兄さんの部屋に入るのは辛かったけど、必要なことがあったし」

ごく限られたメンバーにしか航大の子どもの存在は伝えていなかったが、あまりにも情報が集まらなかったから三上が真理恵の助けを求めたようだ。恐らく事情を話して、航大の子どもにつながるものがないか探すように頼んだのだろう。
口ごもってしまった真理恵の言葉を受けて、三上が話しを続けた。

「ご母堂様が見つけちゃったんですよ。写真を」
「写真って?」

「航大が子どもを抱いて、女性と並んで映っている写真が一枚だけデスクの引き出しの奥にあったんです」
「誤魔化そうと思ったけど、その子がお兄様そっくりで……」

確かに、あの男の子は航大によく似ていたと、友哉の脳裏に去年の秋の記憶が蘇ってきた。

「今、その写真は?」

「母が持ってるわ。でも、私がスマホで撮ったておいたのならこれよ」

真理恵がスマートフォンを出して友哉に写真を見せてくれた。

「画像がよくないけど」

友哉は見た瞬間に鼻の奥がツンとする。航大の笑顔を見ると熱い思いがこみ上げてきた。
そして男の子の笑顔。確かにこの前に見た頃より幼いが、航大のコピーの様にそっくりだ。

そして、彼女……?


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