ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
「印象が違うな……」
思わず友哉の口からこぼれ出た言葉に、真理恵が反応した。
「やっぱり」
「やっぱりって?」
友哉が真理恵を見ると、きっぱりと言い切った。
「航大の子どもを産んだ人、私、知ってるの」
「え? 彼女は真理恵の知り合いだったのか?」
「仁クンにはもう話したんだけど、写真に写ってる人と私、中学の頃に塾で仲よかったの」
もう何年も前の話だが、万里江の記憶は鮮明だった。
「俺たちが通ってた、あの進学塾か?」
「そう。彼女がお兄さんにバレンタインのチョコを渡してたから覚えてる」
今となっては微笑ましい話だが、友哉にはチョコレートの山しか記憶にない。
「だが、アイツは山ほどチョコを貰ってただろう?」
「ええ。でも、初めてお兄さんから『お返しってどうすればいい?』って聞かれたからよく覚えてるわ」
「でも、中学生の頃だろう?」
友哉は混乱した。初々しい恋が大人になっても続いていたなんて誰が信じるだろう。