ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
混乱する友哉に、三上が冷静な言葉をかけた。
「まあ、そこは置いておいて、問題はここからです」
「なにか問題があるのか?」
もう食事どころではない。
三人は小さなテーブルを囲んで座り込み、真剣に話を進めた。
「ふたつあります」
三上の真剣な口調に、友哉はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ひとつ目。航大の子供を産んだ女性、藤本佳奈さんは亡くなっています」
「ええっ!」
友哉の反応は気にせずに、三上は淡々と言葉を続ける。
「ふたつ目。現在のところ、航大の子どもはどこにいるかわかりません」
母親が亡くなっているというショックから友哉は立ち直れないままだ。
茫然としたまま、三上と真理恵の話を聞いている。
「私、この写真を見てお兄さんの恋人が藤本佳奈さんだってわかったから彼女を探したの。そしたら、去年の十二月に亡くなってた……」
さすがに真理恵も口にするのが辛そうだ。
「でも俺が十一月に会った時は、元気そうだったぞ?」
なんとか友哉が彼女の姿を思い出しながら告げると、三上が頷いた。
「問題はそこです。友哉が会ったのは、佳奈さんではないんです」
「え? でもこの写真の女性だった。雰囲気は少し違うが俺が会ったのはこの人だよ」
友哉の疑問は直ぐに解けた。
「あのね、佳奈さんって双子の姉妹だったの」
「双子? じゃあ姉と妹はそっくりってことか」
「そう。お兄さんの恋人は佳奈さんだから、きっと友哉さんが会ったのは妹さんの方ね」