ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
様々な感染症と戦うアフリカでは海外からの医薬品の援助が欠かせない。
友哉はそれを見て、日本も例外ではないと思った。
まずアメリカやヨーロッパで開発された新薬を日本で作るための工場が欲しかった。
いずれは、自社で新しい薬を開発していきたいという夢さえ持っている。
その第一歩として、白石商事が仲介してアメリカの大手製薬会社の薬を作る工場を手に入れようと考えていた。
「今は伯母さんに落ち着いてもらうのが一番だな」
友哉は文香の暴走が一番気掛かりだった。
「ええ、私も母の気持ちが他のことに向くように心がけます」
真理恵も同じ気持ちらしい。
「私は藤本家についてもう少し調べてみようと思います」
三上と真理恵は顔を見合わせている。お互いに目的はひとつだ。
「恐らく妹の瑠佳があのまま子どもの面倒を見てるんだろうな」
友哉が母子と間違える程によく懐いていたし、瑠佳が子どもを一番に考えているのは知っている。
(キスの時も、電話の音に子どもが目を覚ますと慌てていたな)
余計な記憶まで蘇ってきたので、あの唇の感触まで生々しく思い出す。
「どうかした?」
緩んだ表情を見られたのか、真理恵が鋭く突っ込んでくるので友哉はキスの記憶を心の奥に押しやろうとしたが無理だった。