ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


礼服姿の友哉は凛々しいし、瑠佳はふんわりとしたハイウエストのドレス姿だ。

瑠佳のお腹の中には、予想通り赤ちゃんが宿っていた。少しお腹が目立ってきたところだ。

「瑠佳」
「なあに?」

「真理恵が合同で式を挙げようって言ってきてたけど、断ってよかったのか?」

「ええ、私はあの日の写真があればいいもの」

別荘で写した、シンプルなドレス姿の写真だ。

「それに……」
「うん?」

「赤ちゃんは、真理恵さんより私の方が先だもの」

そっとお腹に手を当てる。

「変な競争してるんだなあ」

「あら、三上さんの方が大変よ。真理恵さん、たくさん産みますって文香さんに宣言していたから」

「ああ、三上から聞いたよ。まるで種馬だってボヤいてた」

クスクスと瑠佳は笑いがこみ上げてきて止まらない。

「あなたも、頑張ってね」
「え?」

「私も、まだまだ産みたいもの」
「ああ、そういうことなら、任せておけ」

自分から話を振っておいて、瑠佳の頬は赤くなる。
そんな瑠佳を、友哉は愛しそうに見つめていた。

瑠佳には夢がある。
自分や真理恵が産む子を、文香や自分の母や、たくさんの家族で育てるのだ。
あの広い白石家の屋敷が子どもたちの笑い声で賑やかになるように、明るい雰囲気に包まれるように。
もう、悲しい過去はいらない。

「なに、笑ってるんだ?」
「ヒミツ」

「今夜、じっくり聞くからな。覚悟しとけよ」
「あ……」

しまったと思ったが、友哉の情熱を込めた言葉を聞いて瑠佳の心は早くも燃え始めていた。
そのまま見つめ合っていたら、祥太の声が聞こえた。

「パパ~、かあさ~ん、お写真だよ~」

「わかった、今行くよ」

友哉が瑠佳のお腹を庇う様に、エスコートしてくれる。

ふたり並んで、ゆっくりと皆の輪の中に歩いて行った。


教会のベルはまだ鳴り響いている。
青空の下、あちらでもこちらでも家族の笑顔が溢れる日になった。








< 96 / 96 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:181

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
私の嫌いな赤い月が美しいと、あなたは言う

総文字数/52,121

ファンタジー46ページ

表紙を見る
あなたと私の恋の行方

総文字数/57,583

恋愛(純愛)50ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop