一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
その時、鷹也さんが低い声で、「ところで」と呟く。
「1週間、誰にかくまってもらっていた? まさかその『好きな人』ってわけじゃないよな?」
「……え」
私は言葉に詰まる。
鷹也さんの目は、問い詰めるときのようなもので……私は思わず目線をそらせる。
しかし、顎を持たれ、目線をそらすのは許されなかった。
「俺自身と、周りの人間を使って探しても1週間見つからなかった。沙穂一人でどうにかできる問題じゃないだろ」
それは確かにそうだろう。
彼が跡を継ぐ予定のヒムログループは、日本に本社を置く製薬会社で、昨年度世界売上高第10位。日本ではもちろんトップ。ヨーロッパにも10社ほど支社があり、ここローマのヒムロ・ヨーロッパホールディングス本社社長が鷹也さんなのだ。
彼が命じれば大抵このことは叶うし、できる。
家出した妻一人見つけるのも『普通なら』1日もかからないだろう。
私はふるふると首を横に振った。
「……いえ、誰も」
「そうか」
鷹也さんと目が合うと、鷹也さんは余裕の表情で微笑む。
「まぁゆっくり吐かせるよ。時間はたっぷりある。ただし、もしそれが男だったら許さないからな」
私はゴクリを息を飲み、それを見て鷹也さんは私の額にキスを落とした。