一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
それから数日、ただ、毎日、ホテルで寝て起きてまた寝て。
それだけの日々。
遥は心配してやってきてくれたけど、私はどうしていいのかわからないままだった。
自分で何とかケリをつけなければならないとは思っていたので、遥には、父に黙っておいてもらっていた。
(もう離婚届け、提出したかなぁ……)
―――ローマを出てから一週間がたったころ。
日本の街はもう間近に迫るクリスマスムード。
ホテル近くのベーカリーでパンだけ買って部屋に戻ったけど、なんだか食欲がなくて、それも食べずにすぐにベッドに飛びこんだ。そしたらすぐにウトウトしてきた。
少しして、ゆっくり目を開けると、目の前にはいるはずのない人がいた。
「なんだ、また夢を見てるのね……。いっつも自信たっぷりで、余裕の表情で……本音なんて何一つ見せなくて……」
(優しくて、酷い鷹也さんだ)
「そう、それは悪かったな。だから『離婚届』なんて置いて出て行ったのか?」
―――もうすぐクリスマスだからサンタがプレゼントにこんな夢を見せてるのかしら……。
離れてみるとたった一週間なのに、もう恋しかった。
会いたかった。
すると、突然、ぶにり、と頬を掴まれた感触。
「……あれ? ほんと変なゆめ……。ふぃんぎゃぁっ……!」
目の前に氷室鷹也、その人がいるのだ。
―――夢ではなく本物の……。
「た、鷹也さんっ⁉ どうして⁉」
「どうしてと聞きたいのはこっちだけどな。でも、とにかく……見つかってよかった」
ふいに、強い力で抱きしめられる。
彼の優しく低い声が鼓膜を揺する。
ーーー彼はこんな時まで怒らないんだ。
そう思うと辛くもあった。
私は……どんなクリスマスプレゼントより『鷹也さんの心』がほしかったんだ。