一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

 日本について、途方に暮れていた私は、遥に連絡をしていた。

「どうしたの突然、しかも日本にいるなんて……!」
「ごめんなさい」
「喧嘩?」
「うぇぇえええええ……」

 私は心配してホテルまで来てくれた遥の胸に飛び込む。「喧嘩の方がよっぽどよかった……。もう離婚するしかない……」


 エグエグと泣き続ける私を、遥は慰めてくれて、
 それから、抱きしめ、何度も優しく撫でてくれる。

「やっぱり嫌になったの? やっぱり性格が最悪だった?」

(『やっぱり』ってなんだっ!)

 私はむすっとして首を横に振る。

「ち、違う! 鷹也さんのこと、悪く言わないで!」
「じゃ、どうして離婚したいだなんて言いだしたの」

 遥は呆れたように息を吐いた。

「……それは」
「それは?」

「鷹也さん、私のこと『大事な人』って思ってなかったんだもん……! 大事な人が他にいたってだけで……! 貴子さんってすっごい美人で、会社の規模も釣り合ってる人……! だから私と鷹也さんに子どもなんてできるはずなかった……」

 遥が、嘘でしょ、と呟いても、私はそうだからっ……と首を何度も横に振った。

「……私、本当に彼のそばにいる意味なんてないんだ」

 考えてみれば鷹也さんはずっと優しかった。
 本心さえ、よくわからなかった。

―――貴子さまと鷹也さんは、お二人ともお互いに思い合っておりました。きっと今も……。鷹也さんの一時の気の迷いで貴子さんと婚約破棄し、あなたと結婚され……。今はもう鷹也さんも後悔されているのではないですか? その証拠に、時間が経ってもあなたたちに子どもはできない。

 安曇さんの言葉がまた脳裏を回る。
 安曇さんが言ったように、私に対する後悔と、贖罪の気持ちでそばにいたなんて、そんな残酷な真実は知りたくないよ。
< 68 / 108 >

この作品をシェア

pagetop