一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
日本について、途方に暮れていた私は、遥に連絡をしていた。
「どうしたの突然、しかも日本にいるなんて……!」
「ごめんなさい」
「喧嘩?」
「うぇぇえええええ……」
私は心配してホテルまで来てくれた遥の胸に飛び込む。「喧嘩の方がよっぽどよかった……。もう離婚するしかない……」
エグエグと泣き続ける私を、遥は慰めてくれて、
それから、抱きしめ、何度も優しく撫でてくれる。
「やっぱり嫌になったの? やっぱり性格が最悪だった?」
(『やっぱり』ってなんだっ!)
私はむすっとして首を横に振る。
「ち、違う! 鷹也さんのこと、悪く言わないで!」
「じゃ、どうして離婚したいだなんて言いだしたの」
遥は呆れたように息を吐いた。
「……それは」
「それは?」
「鷹也さん、私のこと『大事な人』って思ってなかったんだもん……! 大事な人が他にいたってだけで……! 貴子さんってすっごい美人で、会社の規模も釣り合ってる人……! だから私と鷹也さんに子どもなんてできるはずなかった……」
遥が、嘘でしょ、と呟いても、私はそうだからっ……と首を何度も横に振った。
「……私、本当に彼のそばにいる意味なんてないんだ」
考えてみれば鷹也さんはずっと優しかった。
本心さえ、よくわからなかった。
―――貴子さまと鷹也さんは、お二人ともお互いに思い合っておりました。きっと今も……。鷹也さんの一時の気の迷いで貴子さんと婚約破棄し、あなたと結婚され……。今はもう鷹也さんも後悔されているのではないですか? その証拠に、時間が経ってもあなたたちに子どもはできない。
安曇さんの言葉がまた脳裏を回る。
安曇さんが言ったように、私に対する後悔と、贖罪の気持ちでそばにいたなんて、そんな残酷な真実は知りたくないよ。