一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
「城内も、必死に探してくれてたから。でもな、城内……」

 鷹也さんのフォローすらも遮って、城内さんは続ける。

「これまで一年、どれだけやってきたんですか! 要領がクソほど悪いのに驚くほど全部こなして、寝る間も惜しんで、ノートも真っ黒になるまで書いて……! それで覚えて、そんなことをしてでも、鷹也さんの近くにいたかったんでしょう。それがなんですかっ! あなたは何を考えているんですか! 勝手にいなくなるような真似をして、バカですかっ!」

 城内さんが思いっきり叫ぶ。
 目に涙まで浮かべて。

 城内さんは普段いやなくらい冷静だし、怒るときも冷静だったけど、こんなに感情的に怒ったところも見たことなくて、私は戸惑った。

「あ……あの……す、すみません」

 私が頭を下げると、城内さんは眼鏡を指で持ち上げ、以上です、と言う。

「本当にご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「それはきちんと鷹也さんにお伝えしてください。一週間ほとんど寝ていませんでしたから。そしてもう二度とこんなことしないようにっ」

 怒ったように城内さんにそう言われて、私は鷹也さんを見つめる。
 鷹也さんは気まずそうに目を背けて、苦笑していた。

< 75 / 108 >

この作品をシェア

pagetop