一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
「鷹也さん、なにをおっしゃっているのですか」

 貴子さんが怒っているのか、怯えているのか……そのどちらもなのか。震えた声で問うた。
 鷹也さんは続ける。

「共同開発事業を成立させることを条件に正式に婚約破棄はしていますよね。それが今さら婚約破棄のことを勝手に蒸し返してきたのはどちらでしょうか。しかも、沙穂まで巻き込んで」

 怒りに震えるのを精一杯抑えるような声。
 そんな声をしている鷹也さんは貴子さんの様子を気にもせずに続ける。

「沙穂が離婚届を置いて出たことに、フェミル製薬のあなたたちが絡んでいると私に告げたわけではありません。彼女はそのような女性ではありませんから」

 貴子さんは震えた声で、鷹也さんをまっすぐ見つめて、それから口を開いた。

「後悔したの……あなたと婚約破棄して。私はあなたのことが好きだったから」

 鷹也さんは、怒ったように冷たく微笑む。

「どの口がそれをおっしゃっているのでしょうか。私の記憶が間違っていなければ、あなたは、私と婚約してからも、少なくとも3名の男性と身体の関係を持っていました。それを婚約解消時にヒムロの会長に告げなかったのは、会長が一切の取引を辞めると言い出さないためのせめてもの温情のつもりでしたが、それも無下にすると言う事ですか」

 鷹也さんが言うと、貴子さんは唇をかんだ。

「今後一切、沙穂と藤製薬にはかかわらないでいただきたい。次このようなことがあれば、会社ごとなくなることも視野にいれておいたほうがいい」

 見たこともないほど、冷徹な声と態度。
 貴子さんと安曇さんはすぐにその場を後にした。

 私は事情が全く把握できないままで、その場に佇んでいた。

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