一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
 その後、ふう、と息を吐いて、城内さんがやってくる。

「城内さん⁉」
「なにかあれば会長とお電話をお繋ぎしようと思っていたのですが、大丈夫でしたね」
「か、会長と……?」

 それを聞いて、鷹也さんは息を吐く。

「だから、これくらい俺一人でどうにかするって言うのに。過保護なじいさんだな」

(あれ? 鷹也さん、思ったより口悪いな……)

 私がきょとんとしていると、城内さんが苦笑して続ける。

「大事なお孫さんと奥様のためですから。会長、いつも言葉足らずで、前回も子どものことだけ聞いて沙穂さんを不安にさせてしまったかと、大変反省されていましたよ」
「え……?」

「その話をソフラル製薬の前会長にしたら大変怒られたとも」
「仲いいんだよ、昔から。じいさんはあの前会長と。沙穂も前会長のこと知ってるだろ」
「この前にパーティーでお会いしました」

 私が言うと、鷹也さんは息を吐く。

「ほんと、沙穂は昔から人の顔の物覚えが悪いな」
「それでもご結婚されてからはご努力がかなり見えます」
「わかってる」

 そう言って微笑まれる。

「はぁ……?」

 いろいろよくわからない。
 でも、とにかく一番驚いたのは……。

「た、鷹也さん……? フェミル製薬の件はご存じだったんですか……?」

 これだ。
 先ほどの件。全部知っていた、それ以上に知っていたようだった。

 鷹也さんは微笑む。

「言っただろ、沙穂は隠しごとが下手だって。それに『もしそれが男だったら許さないから』とも伝えたはずだ」

 鷹也さんを見ると、鷹也さんは私の髪を撫でる。

「『大事な人』の一人くらい、きちんと守るから。安心して俺にお前を守らせろ」
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