一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
部屋に連れて帰ったのはいいものの、
これまでのどの仕事よりも真剣に考えていた。
どうすればいい?
どうすれば彼女はこちらを覚えていてくれるだろうか。どうすれば、彼女に近づけるだろうか。
最初から強引に行くのはきっとナンセンスだ。
彼女にはそろそろ縁談が持ち込まれている時期だと思った。
そんな女性に強引に迫る男は男としてどうだ。彼女もきっとそれは嫌がるだろう。
時折見える彼女の白いうなじや頬に落ちるまつ毛の影を見ないようにして、高校生時代の彼女を何度も思い出して理性を保った。
そうだ、相手は高校生と思えばいい。
今は、彼女を助けて、その後のことは……もっと策を練って、彼女を捕まえればいい。
彼女を泊めたけど、絶対何もしない、と自分にも彼女にも誓って。
今じゃない。今は、だめだ。
とりあえず、彼女が婚約の話をするかどうかをうかがうことにした。
俺に好意を持ってくれて、すこしでも恋愛対象として考えるなら、婚約の話は彼女の口から出ないような気がした。
俺はできるだけ冷静に彼女と話す。
しかし、なぜか思った以上に胸は高鳴っていた。
「ところで、どうして一人でローマに?」
「えっと……実は私、もうすぐお見合いして結婚するんです」
「へぇ……」
あっさり彼女はお見合いの話をした。
あぁ、やっぱりそうだよね。
彼女は自分のことを恋愛対象として見ていないからこそ、こんなことあっさり言うのだろう。
心が落胆に染まるが、今からお見合いだったのは好都合だった。
その相手の候補は大体絞り込める。
「で、それが嫌で逃げてきた?」
思わず希望を込めてそう聞いてしまう。
しかし、彼女は、何度も首を横に振った。