second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



「・・・・・・」

『・・・一緒にって・・・その後は?』

「・・・・・・」

『・・・・きょう?』

「・・・・・・」


どうやら言葉の途中で眠りに落ちてしまった恭。
もしかしたら無人島の話の流れも寝言の一部だったのかもしれない。

こうなってしまうのも無理はない。
当直明けで名古屋ー伊勢間を往復運転して、広い伊勢神宮やおかげ横丁をたくさん歩いて・・・あたしとセックスまでしているんだから。


『恭・・・ありがと。初詣。それと・・・こんなあたしを大切に抱きしめてくれて。』

彼が眠っていることをいいことに、あたしは恥ずかしくて面と向かっては彼に言えないことを口にし始める。


『こんなにも血が通っていて、大切にされたセックス・・・ホントに初めて。』

『こんなにも女性に生まれたことを感謝したことなかった・・・恭のおかげ。』

『でももう午前1時・・・もう“明日”なんだ・・・』

『終わって欲しくなかった初詣は本当にもうおしまい・・・だから新しい恋を見つけなきゃね・・・恭のことを・・・本気で好き・・・になる前に・・・。』


泣きそうになった。
本気で好きになるという言葉を思い浮かべてしまったせいで。

でも、それは許されない
1月2日になっている今日
仕事に戻らなきゃいけない今日

今日という日に、怖いという感情と大切にしたいという想いを併せ持つ・・そういう恭は、堕落した陰の世界にいるあたしの心の中に居てはいけない

今日という日にいるのは、病院内で数多くの人に注目される陽の世界にいる、あたしにとってただの同僚である橘クンなんだ


『橘クンはあたしみたいな自ら堕落して行った女よりも、もっとまっすぐにあなたと向き合って恋をする素敵な女性が似合うんだから・・・』

『だから、恭とは、昨日で・・・バイバイ・・・』


とうとうあたしの目から涙がこぼれ落ちた。
恋することを諦めていたあたしに、恋をするおまじないをかけてくれて、俺の前だけで泣き虫になっていいって言ってくれた恭。
そんなにもあたしを大切にしてくれた彼をあたしの心の中で消し去ったから。


『橘クン・・・寝坊しちゃダメ・・だよ。』


1月2日午前1時すぎ。
恭を自ら手放したあたしは鼻の上まで掛布団を被って眠っている橘クンに少し鼻声でそう囁いてから、ひとりきりでその布団から出た。

そして、ベッドの傍に落ちていた衣服を再び着込んで、眠ったままの彼に背を向けたまま黙って寝室を出て、まだ人が通る気配のない彼のマンションをたったひとりで後にした。



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