second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



『奥野さん、病院、着きましたが、ご自宅まで送りましょうか?』

「ううん。あたしも職員駐車場にクルマ置いてあるから。」


自分の日常の中にある病院玄関が視界に入った今、
責任のある大人、しかも、人の命を預かる医師という人間でなければならない
俺、そして奥野さんはいつまでも日常からかけ離れた時間を過ごすわけにはいかないと自覚させられる。


「今日は一日ありがと。ホントに楽しかった。」


でも、彼女のこの一言で、
彼女にとって今日という日が良い日になったのなら良かった
と少しだけ救われた気になる。

それと同時に、日詠さんのことを少しでも忘れてくれたらとも思ってしまう。
なぜなら、今日、彼女を初詣に誘ったきっかけは、日詠さんの結婚式の動画を彼女が視聴することを阻むためだったから。

でもさすがに彼女が日詠さんのことを忘れることまで望むのは欲張りかもしれない
・・そんなことを考え始めた時、


「橘クン、あのね・・・」

『はい?』

「昨日、森村クンから送信された動画をあたしが見せようとした時、元気がなかったように見えたけど・・・」


彼女から、自分が予想していなかったことを問いかけられた。


まさか動画のことで自分が彼女に心配されていたとは・・・
動画のことを忘れて欲しかったのに、今のこの状況
楽しかった1日を彼女と一緒に過ごせたという充実感に満たされながら、“おやすみなさい、また明日”と言いながら彼女とここで解散するんだと思っていた

その充実感が消えてなくなった
でも彼女のせいじゃない
昨晩、病院屋上で彼女に動画を見るように促された時に、ちゃんと向き合おうとしなかった俺のせいだ

だからこのまま、彼女と過ごした特別な1日を終わるわけにはいかない
動画の中にある、彼女が受け入れなくてはいけない現実を彼女に自覚してもらう
そうでなくては、彼女は無意識の世界で日詠さんという存在にがんじがらめにされたまま抜け出せないからだ


日詠さんだけが幸せになる
そんなの、ダメだ
日詠さんも、そして奥野さんも幸せになる
そうじゃなくては・・・


『昨日、奥野さんが俺に見せてくれようとした動画、今、俺に見せて下さい。』

「えっ?」

『そうすればわかりますよ。だから一緒に見ましょう、今。』

「でも・・・」

『いいから、早く!』


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