second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
本当ならそのまま素通りしてしまいたかった。
でも、
「奥野先生、あけましておめでとうございます!新年の挨拶、遅れましたが、今年も宜しくお願いします♪」
『・・・こちらこそ。』
杏仁豆腐の入った器をもったまま、あたしにそう声をかけて会釈した女性のせいで、あたしはその場からすぐに動くことができなかった。
その間にどうやら隣に座っていた寺川部長も立ち上がっていたようで
「雅、さっきの返事、待ってる。少し時間をあげるから、雅も邪魔者は消し去っておいてくれ。」
周囲にしっかりと聞こえそうな声量であたしにそう告げてから、先にカフェテリアを出て行ってしまった。
多分、背後にいた橘クンに今の会話を聞かれていた
どこから聞かれていたのかわからないけれど
寺川部長とあたしの、ワケありな関係は気が付かれた
でも、彼にどう思われようともういい
彼の手を自ら離したのは自分なんだから
『お先に・・・』
あたしは自分に挨拶をしてくれたその女性にそう告げて立ち去ろうとした。
けれども、彼女の隣にいた橘クンと目が合ってしまう。
『橘先生、今年も宜しくお願いします。』
下唇を噛んでいるように見える彼に、あたしは今年初めて顔を合わせたかのような挨拶をして、彼の返答を待つことなく逃げるようにその場を後にした。