second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結


俺の目の前にいるのは
保育器の中でたくさんの点滴ルートやモニターのコードに囲まれた状態で必死に呼吸を重ねる未熟児の女の子

心電図アラームが鳴っている海斗クンのことが気になるも
この呼吸の速さの原因を掴むまではここからは動けない


『こんなにも浅くて早い呼吸なんて、苦しいよな・・・』

新生児用のとても小さな聴診器をもう一度保育器の中に入れ、彼女の胸にそれをそっと当てて、胸の音を聴くことに集中した。

時間をかけていられない
それでも正確に状態を把握して診断しなくてはいけない

命の闘いの場であるここNICUは
時間との闘いの場でもあったりすることが多い


『谷川主任、体温をもう1回計測しておいてくれる?』

「体温ですね。」

『海斗クンのとこにいるから、数値聞かせて。』

「わかりました。」


保育器の中に入れたままだった聴診器を抜き取り、手袋を捨ててから丁寧に手洗いをして、ついさっき警告アラームが鳴っていた海斗クンのところへ素早く駆け寄った。


「橘先生・・・」

『遅れてすみません。』



海斗クンのお母さんが彼を腕の中で抱きかかえたまま、今にも泣き出しそうな顔で俺をじっと見つめた。



『アラーム音のせいで、落ち着いて授乳できないですよね?』

「なんか大丈夫かな?って心配で・・・」

『・・・そうですか・・・お母さんさえよろしければ、看護師さんに傍についていて貰って授乳してみますか?』

「でも、看護師さんもお忙しいのでは?」

『本当は僕が一緒に・・と言いたいところなんですけれど、男性の僕が傍にいると余計にやりにくいと思うので。それに、看護師さんの業務は僕が代わって行いますから。』

「・・・・それだと安心です。」

『じゃあ、決まりだね。里中さん、今、ここいい?』



早速、隣の新生児の清拭(体拭き)を行ってくれていた看護師の里中さんに声をかけた。

里中さんは新生児の母親のフォローも丁寧に行える僕にとっても信頼のおける看護スタッフ
丁度いいところに居てくれたものだ


『授乳、見てあげてくれる?無理して呼吸することなく授乳できる姿勢とかも教えてあげて欲しい。清拭は僕がやっておくから。』

「わかりました。この子の清拭はあとお尻周りだけです。オムツと病衣はこのワゴンのものを使って下さい。」

『助かるよ。僕は清拭しながら、ここからモニターの変化もチェックしておくから、アラーム音はオフしたままやってみて。』



”医師だから、診察と処置しかしない”

それでも問題はないかもしれないけれど
それ以外で患児に関わることによっても気がつくことは多い

それに時間との闘いであるここでは
医師だからと仕事を選んでなんかいられない
・・・俺はそういう考え方だ


ありがたいことに
ここの看護スタッフもこういう俺を理解してくれている



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