second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『さ~て、お坊ちゃん。体を拭いて差し上げましょうか?』
俺は目の前にいる新生児に向かってそう声をかけてから
沐浴用ワゴンの上にある洗面器の中に浮かんでいたガーゼを手にとった。
『ここ(NICU)を卒業し、小児科病棟へ移る時には大きな泣き声を上げられるようにならないとな。自己アピールをしっかりできるように・・・だぞ。』
と言いながらも、海斗クンのモニターにも気を配りつつ、お母さん達の様子も気を遣わせないようにそっと見つめた。
里中さんが上手く誘導しながら、海斗クンのお母さんは授乳させてあげられていて、しかもモニターの大きな変化もなし。
『さ、いい感じで体も拭けたし、オムツを穿いて俺らも終わりとするか!』
時間との闘いの中
ひとつずつ解決してゆく
いつもの俺なら、それが当たり前なんだけど
今日という日はどこか違う
自分でもわかる
いつも以上に時刻というものを気にしている自分がいることを
それがわかっているから
いつもよりももっと
自分がやるべきことに丁寧に取り組もうと思う
今日という日が
自分にとって
残念な日にならないように・・・・
『よし、オムツ交換終了。そろそろ、か・・・・』
「橘先生、お電話です。」
今日という日
奥野先生と待ち合わせをする約束をした日
正確には無理矢理に約束を交わさせた日
そんな日に俺宛に電話となると
いつも以上にその相手を意識してしまう
もしかして
奥野先生が急患で・・とか
『電話、どこから?』
「北区救急指令本部からです。開業医で生まれた新生児、呼吸状態が不安定であり、NICU(新生児集中治療室)に空きがあるかと。」
『開業医で・・か・・』
どうやら奥野先生からの電話じゃなくて
俺が急患みたいだな
『今、満床だけど、莉子ちゃんは経過順調だから、GICUに移ってもらって、1床、確保しよう。ウチで受けるって返事して。』
「わかりました。」
『あと・・・・・』
自分から奥野先生を誘っておいて、こうなるなんて
緊急搬送とか充分に想定内なはずだけど
生じて欲しくないと心のどこかで思っていた現況だけに
医師失格かもしれないけれど
正直なところ、想定外な気分だ
「橘先生?」
それでも新生児科医師としてこの場では立ち続けなくてはならない
それが自分の選んだ道なのだから