second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



『じゃあ、これからどうすればいいの・・・?』


自問自答しても出てこない答
今のあたしは寺川部長の次の出方をただひやひやしながら待つしかない
そう思いながら過ごした。

そうしているうちに時は過ぎて、寺川部長の目立った動きはなく、気が付いたら明日から2月になろうとしていた。


あたしは外来診察で妊娠8か月の妊婦である今田さんの検診で超音波検査をしていた。

『ちょっと見えづらいな・・・・えっと・・・』

超音波検査機器のプローブを何度も向きを変えても心臓が上手く捉えきれない。

『軸が・・・・』

「奥野先生?」

真っ暗にしている診察室で妊婦の今田さんがあたしの呟きに心配そうに声を上げる。



『あっ、ベビーがお腹の中で元気に動いているのか、なかなかエコー(超音波検査)に映ってくれなくて・・・・もう少しお時間下さいね!』

妊婦さんに余計な心配をかけるまいと、安心してもらえるような声かけをするものの、実はあたしが一番不安になり始めている。

『・・・・・・・・』

いつものプローブの当て方で見えているはずのものが見えない
内臓の軸がズレているような気がする
これといって決め手となる所見が思い当たらない
でもなにかおかしい

でも、ただのあたしのエコー診察技術が足りないだけかも
それでも、おかしいと思ったら放っておくわけにはいかない

あたしはすぐさま、一旦、診察室から出て、白衣のポケットから院内PHSを取り出し電話をかけた。


「はい、小児科病棟看護師香川です。」

『産婦人科の奥野です。今、小児科で動けるドクターにお願いしたいのですが・・・』

「どうされました?」

『胎児エコーで一緒に確認してほしい症例が今、外来にいらっしゃるので。なので、できれば胎児心エコー読影が得意なドクターでお願いしたいのですが。』

「今、うちもちょっと立てこんでいるのですが、一度ドクターに掛け合ってみます。」

『すみません。宜しくお願い致します。』


通話を終えてから、今、目の前にいる今田さんに胎児エコーを小児科医師にも一緒に診てもらう目的を説明する。
エコーで少し見えづらい箇所があるからもうひとりの医師にも診てもらう・・と。


これまでの検診では特に異常所見がなかったこともあってか今田さんはあたしが想像していたよりも落ち着いている。
この後、別の医師によって行われる胎児エコー検査で本当に異常所見が見つかるかもしれないとドキドキしているあたしのほうが落ち着かない。


早く来てほしい
あたしのエコー検査技術をレスキューしてくれるドクター
ホント、助けて・・・

珍しく弱気になったあたしの耳に届いた音。

それは

コン・・コン!

診察室のドアを丁寧に叩く音。


それと


「失礼します。」


あたしのココロに驚きと動揺という感情を
あたしの耳には、鼓膜にすんなり沁み込むような感覚を与える
そんな声が聞こえた。


< 136 / 200 >

この作品をシェア

pagetop