second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結


診察を終えても、外来診察室に残って今田さんのカルテや検査結果をひたすら見つめていたあたしに温かいジャスミンティーを差し出してくれたのは橘クン。


「これ、飲んだら、ちょっと付き合ってくれませんか?」

『・・・うん、いいけど・・・』


こうやって橘クンからの誘われるは久しぶり。
あたしがジャスミンティーを飲んでいる間に、彼は今田さんの電子カルテを見てくれている。

あまり彼を待たせてはいけないからと、ごちそうさまと彼に声をかけると

「じゃあ、行きましょう。」

と彼は笑顔で振り返った。


『え?着替えてからじゃないの?』

「いえ、白衣姿のままで大丈夫です。奥野さんも。」


お互いに想いが通じ合ったはずのあたしと橘クンなのに
彼は病院内ではあたしと砕けた会話をしようとしない。
先輩と後輩という関係のまま。


彼のそういう律儀なところも好きだけど
プレッシャーに押しつぶされそうな今はそれが少し寂しい

『えっ?・・・一緒に帰るかと・・・』

ついそれが漏れてしまったあたし。

白衣のままでいいというのはおそらく業務に関係した用事だったはずなのに
あたし、何やってるんだろう?



「・・・帰っちゃおうか?」

『ダメ!だって今から業務の話とかでしょ?』

「だって、雅に一緒に帰るとか言われたら、もうそれしか考えられないし。」

『えっ?』

「もう頭の中、口では言えないようなことばっかり・・・だから早く用事済ませちゃおう。」


急に砕けた会話。
そのせいで、あたしのプレッシャーで圧し潰されそうだったココロが少しずつ解れていく。
多分、橘クンはあたしの寂しさに感づいたんだ。

恭が突然、目の前に現れたみたいで
胸がきゅんとする


「さあ、奥野先生、行きますよ。」

『・・・・わかりました。橘先生。』


あたしの急な異変も見透かした彼はいたずらっぽく笑いながら、診察室のドアを開けた。

あたしは橘クンに導かれながら前へ進む。
どこへ行くか聞かなくても、落ち着き払った彼についていけば大丈夫とすら思えてしまう。


あたし達は向かったのは産婦人科病棟のある建物。
入院患者さんが何かあったのかと思っていたら、産婦人科病棟を通過する。
その先にあるのはNICUと小児科病棟。

分娩して間もなくの産婦さんがベビーに付き添っていて何かあったのか

そんなことも頭を過った時、突然、あたしを導いていた橘クンの足が止まった。



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