second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結





「先生、NICUから、GCUへひとり移動できたので、スタンバイOKという連絡が来ました。」

『NICU運んだら、すぐに心エコーするからスタンバイしておくように伝えて。』

「わかりました。」


手に持っていた携帯電話の向こう側にいるであろう奥野さんに語りかけながら、目の前にいる看護師に指示を出すというややこしい状況になる。


【もしかして、橘ク】

『奥野先生、すみません。今日、約束していたのに緊急対応が・・・』

『いえ、今、乗っているの、救急車じゃなくて、新生児のドクターカーなんで。お母さんは開業医で入院中です。』

【は?・・じゃあ、あたしに電話してる場合じゃないでしょ?】

『約束していたので。奥野先生と。』

【今はベビーでしょ?約束はまた今度でいいから。】


逆に叱られた
奥野さんに・・・
しかも約束は後回し・・・


「橘先生。早く降りて下さい!!!!!先生が降りてくれないと、ベビーを動かせませんから!!!!!」

ついでに目の前にいる看護師にも急かされている


この現状
通常の俺なら、奥野さんに約束はまた後日に変更してもらって
目の前のベビーに100%集中する
二兎を追うものは一兎をも得ず・・・の諺を自分に言い聞かせながら

でも今日の俺には
後日なんて、そんな選択肢なんてない


『約束は、今日じゃなきゃ、ダメなんです。』

【は?】

先週、俺が外来診察した元気になった陽菜ちゃんの・・お母さん
彼女が今日、南桜病院の日詠医師と人前結婚式を挙げる・・・同じく南桜病院にいる同期の整形外科医師の森村からそう聞いているから

そんな日にいまだに日詠医師のことを想い続けているであろう奥野さんを
たとえ当直とはいえ、業務から解放されている時間の彼女をひとりにしたくはない

陽菜ちゃんのお母さんが出産後に意識不明になっていた時
ずっと彼女の傍に寄り添っていた日詠医師を背後から切なげな目で見つめていた白衣姿の奥野さんの残像が・・・いまだに俺の瞼の裏に焼き付いているから


『そういうことなんで、それじゃ、またコールします。』


そんな俺は目の前で院内へのベビー搬送を急かす看護師と
電話の向こう側で俺に何か言おうとしていた奥野さんに躊躇することなく
もう一度連絡するという約束を奥野さんに押し付けてようやく電話を切った。




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