second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『えっ?』
「電話するって言いましたよね?」
『・・そうだけど・・・これ。』
「女性を守る産婦人科ドクターが体冷やして風邪でもひいたらダメですよ。」
『橘・・・クン・・』
病院屋上にある転落防止柵に手をかけて夜空を眺めながらやさぐれていたあたし。
その背後からふわりと肩にかけられたのは、あたしには似合わなさそうで、男性である彼も使わないであろう淡い桜色のオシャレなストール。
「似合いますね、奥野さん。」
背後から囁かれた。
いつも分娩室で新生児を引き渡す時の、緊張感のある声ではなく、聞いているこっちが癒されるようなやや低い声で。
『は?』
何言ってるの?
今、あたし、スクラブに白衣姿だよ?
それに、誰のものかもわからないこのストールを、涼しい顔で似合うと言われても説得力がないじゃない
この寒空の中、やさぐれているあたしをからかうの、面白い?
ちょうどクリスマスイヴである今日、勤務になってしまい、女性と一緒に過ごすことができなかった橘クンの・・・ただの暇つぶし?
『だって、これ・・・誰か他の人のじゃ・・・』
「僕が買ってきたんですけど・・・」
まさかの、橘、買いました返答に後ろを振り返ったあたし。
あたしに体を冷やすなとか言っている張本人も、あたしと同じスクラブに白衣姿。
病院の屋上の照明は薄暗くて、しかも、転落防止柵に取り付けられているクリスマスイルミ用のLEDライトは至る所で点滅を繰り返しているせいで、彼の顔がはっきりと見えない。