second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



「ああ・・・だから、まきちゃん、恥ずかしいかもしれないけれど、うんちのことで気になることがあったら、まずはお母さんに相談しよう。お母さんもきっとまきちゃんが教えてくれるのを待っているからね。」

「そうだんしたら、もうだいじょうぶ?」

「ああ・・お母さんはまきちゃんのことを一番よく知っているからね。あとは、いいうんちを出すには、よく運動してよく寝て、よく笑って・・・あとは、こまめにお水やお茶を飲むことだよ。」

「うん、そうする!」


さっき通りかかったERの出入り口付近。
橘クンがさっき診ていた小児患者の女児をまだ診ていた。
おそらく処置を行っていたから時間がかかっていたのだろう。

それでも、橘クンはその女児に丁寧親切に対応している。
話している内容は医師らしいけれど、言い方も彼女を見る視線も近所のお兄さんみたいに優しい。
小児患者である女児も、さっきよりも安心したような顔をしていて、見ているこっちがほっこりとするぐらい。



『まきちゃん、大変だったね。きっと今晩、眠っているうちにサンタが来てくれるよ。』


楽しいはずのクリスマスイヴに、病院に来なきゃいけなくなったその女児が、安心して家路に着くことを願いながら、あたしもこっそりとそう呟きながら、仕事を終えたERを出た。


その途中で通りかかったのは小児科病棟のデイルーム。


「こうた、もう寝た?」

「うん。ようやく。」

「シャワー借りてくるんだろ?・・・その間、俺がこうたの傍にいるから」

「ありがと。助かる。」


うちの病院の小児科病棟は基本的には付き添い不要の完全看護体制。
けれども、患児の状況によっては、両親など家族の付き添いを認めることもある。

多分、今、そこのデイルームで話をしているのは、入院中の患児のご家族。
母親のほうが付き添いをされていると思われる。
父親は仕事帰りなのかスーツ姿。
付き添い中の家族は子供が寝てから病棟の浴室で入浴することが多いそうだ。


「なんか美味しそうなもの、食べてるな~。」

「一口食べる?」

「うん・・・」

「売店で買ったの?」

「ううん・・違うの。付き添いでお疲れでしょうから、クリスマスですし、良かったらどうぞ・・って橘先生というお医者さんがお裾分けして下さったの。」


母親が食べているのは、遠目で見てもあたしがさっき食べていたものに似ているように見えるブッシュドノエル。
ただ、あたしが食べていたものよりも一回り小さめのものだ。


「そんなに甘くなくて美味いじゃん。どこのお店だろう?」

「それが・・・橘先生の手作りだって。」

「手作り・・・なんか嬉しいな・・・ここでクリスマス気分を味わえるなんてありがたいな。」

「本当だね。こうたが早く良くなって来年のクリスマスは家で楽しみたいね。」


こうたクンの両親と思われる彼らの会話を聞いてまた驚いた。
橘クンがインスタ映えしそうなレベルのブッシュドノエルを手作りしたこと。

そして

彼が普段従事しているNICUではなく、小児科病棟に入院している患児の親御さんにそれをお裾分けしていたことにも。
彼のそういう行動が受け取った人間のココロも温かくしていることにも。


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