second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



あたしが知っている橘クン

それは、何もかもが小さくて未熟で繊細なNICUの新生児を相手に、慎重かつ丁寧だけど冷静沈着でスピーディーに対応する姿
業務以外では無駄なことはしませんみたいな風を吹かせているようにも見えたから、仕事以外では近寄り難かった

それなのに今日の橘クンは
さっきのERでは女児を穏やかな顔で帰宅するように背中を押したり
小児科入院中の患児の親御さんにもブッシュドノエルを届けるサンタクロースみたいなことをしてあげていたり


『ブラック橘が、サンタ橘・・・か~。』


あたしは明日食べるはずだった医局の冷蔵庫に入れてあるブッシュドノエルを手に取り、スプーンでそれをそっと掬い、じっとそれを見つけてから口の中へ運んだ。


『どこかのお店のものだと思っていたのに・・・確かに甘さ控えめで優しい味だ・・・』


さっきまで温かいカップ麺で冷えたカラダを温めようとしていたあたしなのに
冷蔵庫で冷やされていたブッシュドノエルでココロが温まったあたし。

いつものクリスマスイヴは、365日のうちのただの1日だった
去年のクリスマスイヴも、当直していていつもと変わらない1日
もちろんクリスマスケーキんなんて食べなくて
それなのに
なんで今日というクリスマスイヴは、手の中にあるブッシュドノエルに癒されているんだろう?


『・・・あれ?あたし、橘クンの思うツボ・・・状態・・?』


ブッシュドノエルが甘さ控えめであるとはいえ、甘いものを食べ慣れないあたし。


『いやいや、サンタ橘は、小児科病棟の親御さんに届けるのが目的だったんだから・・・あたしのはただのおまけだよ。』


頭の中も通常運転ではなさそうなあたしは、ERや産婦人科病棟からの次のコールに備え、口の中も頭の中もリセットするために、ブラックコーヒーを飲んでから産婦人科病棟へ向かった。



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