second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結




ゴ~ン♪・・・ゴ~ン♪


心が洗われるようなその音。
ふたりとも黙ったままその音にしばらく聞き入っていて。


「今年も宜しくお願いします。奥野さん。」


さっきまで照れ臭そうだった橘クンだったのに、さっき耳にした除夜の鐘の音で彼も心の変化があったのだろうか?
いつもの、彼らしくクールにそう挨拶してくれて。

『・・・こちらこそ宜しくお願いします。』

ようやくいつものあたしに戻ることができた気がした。
それもあってか、橘クンにも嬉しさのお裾分けをしてあげたくなった


『・・・ねえ、橘クン、これ、見て!』

「スマホ・・ですか?いいんですか?個人情報とか・・・」

『大丈夫!橘クンにも見せてあげたいから!』


遠慮気味にあたしのスマホを覗き込んだ橘クン。
そんな彼にもしっかりみてもらいたいあたしは彼が見やすそうな彼の胸元までスマホを差し出した。


それなのに橘クンはその動画を一瞬見ただけで、スマホをあたしのほうにそっと押し返し、

「・・・奥野さん・・・今日の当直明け、初詣、行きませんか?」

動画とは全く関係のない話題、しかも、初詣のお誘いをしてきた。


伶菜ちゃんと日詠クンの結婚式の動画
橘クンは興味なかったのかな?
橘クンも陽菜ちゃんの主治医としてここに映し出されている人達に関わった人なのに・・・

あたしはこの動画、本当に嬉しかったのに
橘クンはそうでもなかったのかな?

確かに橘クンは陽菜ちゃんに関わっただけだから
あたしほどは思い入れがなかった?


『ごめん・・何か気に障った?』

「いえ、そんなことないです。」

『でも・・・・』

「なんか自分なんかが見ちゃいけないような気になっちゃったんで・・・気にしないでください。」


スマホのディスプレイの明かりによってさっきまではっきり見えなかった橘クンの表情が窺える。
こっちが謝らなきゃいけないはずなのに、申し訳なさそうに笑う彼。

なんか元気ない、橘クン
このままにしちゃいけない
そう思ったあたしは

『橘クン、あたし、初詣、行きたい。』

「えっ?」

『だから当直明け、初詣、行こ!』

積極的に彼を誘った。
ついさっきの彼の反応が気になったままではまたもやもやしそうだったから。


「えっ・・あ・・・そうですね。わかりました。じゃあ・・・」

『今度こそ携帯電話に連絡する。仕事、終わったって。』

「・・・あ~はい。電話ですね。」


橘クンからのクリスマスイヴのお誘いには消極的だったあたしだったから
今の積極的なあたしの返答に橘クンは一瞬驚いた表情を見せたけれど、すぐさま彼らしい涼し気な顔で頷いてくれた。


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