second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



助手席・・・それは特別な場所
あたしは今まで付き合ってきた男性達のクルマでは座らなかった場所
過去のあたしは胸を張って交際できる関係ではないことがほとんどだったから

日詠クンへの想いが成就しないとわかっているからこそ、日詠クン以外の男性とカラダだけの関係だった過去のあたし

そういうあたしが助手席に乗るとか
しかも病院イチのモテ男のクルマの助手席とかはダメだと思う
そう思っているのに今のこの状況。

『・・・ありがと。お言葉に甘える。』

ジャスミンティーがあるからと誘導されては、断るわけにはいかなかった。
言われた通りに助手席に座ると、温かいジャスミンティーが手渡された。
でも、あたしにも少し冷めちゃった缶コーヒーが2本ある。

『橘クン、あたしも缶コーヒー・・橘クンの分も買ってあって・・・』

「俺、ちょうどコーヒー、飲みたかったんです。ジャスミンティーと交換ってことで、いただきます。」

運転中の彼は前を見ながら、缶コーヒーを載せてと左手を差し出してくる。

こういうやり取り
いつぶりなんだろう?
大学生の頃、日詠クンに出逢う前にちゃんと恋愛して付き合っていた彼以来かもしれない
だからなんだか照れくさい


「奥野さん?」

『あっ、コーヒー・・・あっ、プルタブ開けなきゃ!!!』

「助かります。ハンドル握っているので。」


FMラジオから流れているJ-POPの音を小さくしながらそう答えてくれた橘クンはサングラスをかけたままだから表情はわからないけれど余裕そう
ジャスミンティーを用意してくれているところも女性慣れしているように思えてしまう
年下なのに、この余裕

ううん、違う
年上とか年下とか関係ない
こういう状況、彼は慣れているんだ
でもそんなの当然
院内でも注目され続けている彼だから

それにあたしはそんなことを気にかける立場じゃない
彼があたしを誘ってくれたのもきっと、昨晩屋上で偶然会ってお互いに当直明けで休みだったからだと思うし

これまでも患者を通じてやりとりをする単なる同僚という関係
これからも多分そういう関係なんだと思う
だからいちいち余裕があるとか女性慣れしているとか
そんなこと気にかけちゃいけない

でも、森村クンから送られてきた動画を遮ったのに元気がなかった彼がやっぱり気になる
それを聞くためにも初詣のお誘いに乗ったんだから・・・・

『・・・・ぁ』
「奥野さん、当直明けなので、今、少し眠っても大丈夫ですよ。」

動画のことを聞こうとしてもなかなか言葉が出ないあたしよりも先に、橘クンはまさかの予想外の言葉を発した。



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