second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『そうだね。帰ろう。着物、返しに行かなきゃ。』
「ええ。もっと見ていたかったですけど。」
『えっ?』
「着物姿・・・雅さん・・の。」
ここ最近の橘クンは涼しい顔してさらっとこういうことを言う
傍で聞いている人にはすごく甘く聞こえそう
今日の橘クンとあたしの心理的距離はかなり縮まった気がするけれど
でも彼にとってあたしはただの同僚
クリスマスイヴの彼のキスとかも、彼のクリスマスという特別な時間にあたしが丁度その場に居て、特別な雰囲気に流されてしてきただけ
・・・そう思うようにしないとあたしは酷く勘違いしてしまいそうだ
『・・・だからもう、何も出ないよ、褒めても。カップ麺1年分とか期待されても・・・』
「・・・期待させて・・・欲しい・・・」
でもその涼し気な顔が今のこの瞬間、なぜだか切なそうに見えて
“期待させて・・・欲しい・・・”
“何を”という対象物のない彼のその返答に
あたしの胸はいつもとは異なる鼓動を打ってしまう
橘クンが気まぐれなんかじゃなく
あたしという人間に興味があるんじゃないかという勘違いを本当にしてしまいそう
せっかく楽しい時を彼と一緒に過ごしているんだから
帰宅するまで楽しまなきゃ
今日という特別な日を・・・
だからあたしは今までと同様に、勤務中の彼との雑談時のようにとぼける
『えっ?カップ麺1年分?』
彼があたしのことを本気で好きなのかもしれないと
勘違いしないように・・・・
「・・・ははっ」
『違うの?』
「・・・袋麺1年分・・・のほうがいいです。」
彼はあたしのおトボケに、これまた珍しく破顔大笑しながら一緒にとぼけてくれた。
そのおかげであたしは勝手な勘違いをすることなく家路に就いた。