second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
「えっ、いいの?だって、助手席って・・・」
『温かいジャスミンティーがあるので、隣で受け取って下さい。』
「・・・ありがと。お言葉に甘える。」
俺のお願いには素直に聞いてくれた彼女はそれでも遠慮気味に俺の隣の助手席に座ってくれた。
午前9時すぎ。
当直明けのふたりが元旦の朝陽に目をしかめながら、ようやくエアコンの暖気で温かくなったクルマで走り始めた。
すぐさま隣の彼女から聞かされたのは、俺のために缶コーヒーを買ってくれているということ。
俺が準備していたジャスミンティーと彼女が買ってきてくれた缶コーヒー。
お互いがお互いのために温かいモノを用意していたことに密かに感動する。
その相手が俺にとって高嶺の花的な存在なら尚更だ。
しかもプルタブまで開けて渡してくれようとしている彼女を助手席に座るよう誘導して良かったなんて思ったりもする。
「・・・・・・・」
でもそんな俺の心の中を知ってか知らずか、彼女は缶コーヒーを手渡してくれた後は黙ったまま。
『・・・・・・・』
確かにこうやってプライベートで彼女と出かけるのは初めて
車内でふたりきりになったら何話していいのかわからないかもしれない
俺だって緊張している
できるだけその緊張が伝わらないように振舞っている
自分も運転しないで助手席に座っているだけだったら、今の彼女と同じ状態になるだろう
しかも当直明けだ
ぼんやりしてもおかしくはない
逆に緊張なんてさせたくない
俺の前ぐらいではリラックスさせてあげたい
「・・・・ぁ」
『奥野さん、当直明けなので、今、少し眠ってもいいですよ。』
そう思って彼女に眠るように促した自分の言葉と何か言おうとした彼女の言葉がかぶってしまった。
しまった・・・
けれども、まだ時間はたくさんあるから、今は眠ってもらって、また後でゆっくり聞かせてもらえばいいか・・・
そう思った俺に聞こえてきたのはどこで眠るのかという彼女の声。
そういえば初詣先を説明していなかったなと思いながら、俺は彼女のその質問に、“ここで”と答え、睡眠をとるように再度促した。
その後、また黙ってしまった彼女。
安全運転しなくてはならない自分が彼女の様子を窺うための脇見をするわけにはいかないと自分に言い聞かせていると、隣から“大須観音じゃない”という呟き声が聞こえてきた。