恋と旧懐~兎な彼と私~
「なんだあいつら。選手リレーでも狙ってんのか? 分けるのは決定だな。っにしても暁まで……珍しいこともあるもんだな」



そういえば,そう。

なんであんな本気出してたんだろ。

まだゴール地点にいる2人を眺めていると,慧がすごく悔しそうな顔をしていた。

そして何かを吐き捨てるように言うと,にやっと挑発するように暁くんを見て,たった今全力疾走した人間とは思えない程のスピードで,私のもとへやって来た。



「慧,おつか…」

「愛深っ,すき」

「えっ」



私も,なんて返せない。

直感だけど,慧の真面目な顔と,低い声と,纏う雰囲気から出来なかった。

私のすきとは違う気がした。

こんなに人もいるのに,私の気持ち知ってるのに……

それも込みで,意志を固めてきたらしかった。
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