恋と旧懐~兎な彼と私~
最終章

とある昼休み

「ねぇ,前から思ってたけど,弘愛深に近すぎ」


昼休み,弘と話していると,私を後ろから抱き締めている唯兎くんにそんなことを言われる。



「はぁ,お前は全く。なんとなく予想してたけど,付き合い始めた途端それかよ。図々しくね? なぁ?」

「いや,そんな,べつに……」



むしろ嬉しいとか言ったら,怒る?



「あぁ,愛深が急速に兄離れしていく……いつの間にか名前呼びになってるし……しくしく」



私が弘をお兄ちゃんみたいだと思っていたみたいに,弘も私を妹みたいに思っていたのだと,そこで初めて気がついた。

名前は告白された日に,唯兎くんにそうしてとお願いされたから。

恥ずかしかったけど



『他のやつは呼ぶのに?』



なんて拗ねるように言われては仕方ない。

それに,私だって許されるならずっと呼んでみたかった。



「しくしくとか普通自分で言わない」

「うるさいっ!」



唯兎くんが弘にツッコむと,何故か弘と一緒になって泣き真似をしていた健が声をあげる。



「あーまじうるさい,ねぇ愛深」

「ぁ,う」



なんでもいいけど,いい加減距離が近い。

それに,私の名前を呼ぶ唯兎くんの声が,いちいち甘すぎる。

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